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本来の姿を取り戻す

「みんなの心に輝く学校をめざして」取り組んだ学校経営、「生き生きとした学校生活のために」取り組んだ生徒指導で感じた課題の解消を念頭に置いて教育問題などを考えます。

◇教育行政には現場の視点が必要

 地元代議士の政策秘書の案内で文科省に出向き、意見を述べたことはもう何度も書いた。官僚が校長や教頭として出向するよう特にお願いした。

 2009年4月、品川区立大崎中学校に文科省の官僚が校長として赴任したことを知り、これから何人もが教育現場を経験できるようになれば現場が違和感を感じるような教育施策も少なくなるだろうと思った。

 教育現場への出向は浅田和伸元校長本人の強い希望で実現したとのことで、「我々がやっている国の教育行政の仕事が果たして教育現場から見て頼りにされ共感されるものになっているのかとの自問自答が続いていた。そして、学校現場に近いところで仕事をしたいという気持ちが押さえがたいほど強くなっていた」のだそうだ。

 昨年出版の「教育は現場が命だ」との著書は、文科省出身の中学校長日誌として書かれたものだけあって、3年間の様子が克明に記されていた。この経験を行政に生かしてほしいと強く思ったが、同時に以下のような述懐などに、教職員に信頼され成果も上げられた学校経営ができたのか疑問に思った。

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◆毎日が濃密な時間だと感じる。一方で、人の仕事がいい加減に見えてイライラすることも多い。
◆極力、顔や口に出さないようにしているつもりではあるが「いい加減な仕事だな」と呆れることが山ほどある。自分と比べてはいけないのかもしれないが、仕事への意識が低すぎて話にならないと感じることも多い。
◆気持ちが荒れていていろんなことでイライラし、1週間で3度も声を荒げてしまった。
◆次週に迫った期末考査の試験問題や解答用紙を一つ一つチェック。全教科・学年分をかなり細かく見て直し、朱を入れないものはない。
◆品川区の友好都市ニュージーランドオークランド市から教員交流で来日した先生が今後4週間大崎中で活動するので、臨時の朝の打ち合わせで職員に、臨時の全校朝会で生徒に英語で紹介した。
◆気づいたことは教員に伝える。時には教科の教員全員に集まってもらうこともある。生徒が分かったと言っても本当に理解できているか、実際に自分でやれる力が身に付いているかは分からない。そこまで確認して確実に学力を付けてやってもらいたい。教え方には個性があってよいが、教える内容のコアの部分は共通であるはずだ。教員間で共通理解を持ち、押さえるべきところを押さえなくては駄目だ、ということなど。
◆全体を見て組織を作るのも管理職の大きな仕事だ。個々の教員の希望より学校全体の力を高めることを考えて人事を行った。強い反発もあったがもちろん押し切った。
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 大崎中と私が勤務した学校とでは相当な違いがあるとは思うが、上記のようなことを口にしたり考えて学校経営に当たったら大失敗に終わったことだろう。

 生徒指導に関することは、生徒指導主事や担任、学年主任が対応し、必要があれば校長が最後にというのが通常だろう。学習に関することは学習指導主任、進路に関することは進路指導主事が中心になって対応するなど、組織を活用することが大事だが、浅田校長はあまりにも前面に出過ぎているように感じた。疲労困憊、体調を崩すのは無理もない。

 官僚の現場経験は都道府県の教育長や教職員課長などだが、そこは現場ではない。官僚が校長や教頭として毎年何十人も教育現場に出向するようになれば、現場の視点で教育行政が進められていくことになる。教育活動ははるかに効果的なものになるだろう。   (2020.1.28)