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本来の姿を取り戻す

「みんなの心に輝く学校をめざして」取り組んだ学校経営、「生き生きとした学校生活のために」取り組んだ生徒指導で感じた課題の解消を念頭に置いて教育問題などを考えます。

◇信なくば立たず

 東京都知事の政治資金の私的流用には驚くばかりである。甚だしい公私混同の実態に都民だけでなく多くの国民が呆れたことだろう。

 様々な報道から感じることは、若い頃からの不誠実、且つ利己的な生き方を改めることなく続けてきたということである。批判を浴びるのは当然だろう。

 若い頃ならともかく、老境に近づけば世の中や皆さんのためを思った行動が多くなっていくようでありたい。楽をしよう、得を取ろう、いい思いをしようとの行動をしていては人々の信頼を得られない。自分以外がそうなるように行動すべきだろう。

 孔子は、為政者と人民(及び人民相互)の信頼関係を打ち立てることが政治の要点で、信頼関係がないと人間らしい生活を立てることができない、人間でありながら信頼がないようでは何をしてもうまくいかない、と述べている。最早知事の職務を全うすることはできないだろう。

 言葉巧にどんなに上手に立ち回っても不正な行いは露見する。この度の騒動の決着はこれからだが、多くの人が晩節を汚すことなく誠実に生きることの大切さを感じ取ったことだろう。

 

 「民無信不立(民は信無なくば立たず)」                         

 「人而無信、不知其可也(人にして信無くば、その可なるを知らざるなり)

   (2016.5.31)

◇不正に道を譲ったら

 三菱自動車の燃費不正、空港の耐震化工事液状化防止)のデータ改竄、強固な地盤まで杭が届いてなかった横浜の傾きマンション(杭データの偽装と施工不良)などには呆れるばかりである。

 不正はやがて明らかになり、牛肉偽装事件で廃業した雪印食品、料理の使い回しなどで店を閉めた大阪の老舗高級料亭船場吉兆、食品偽装で廃業した北海道の食品加工会社ミートホープなどのようになる。

 企業は納期や生産性といったことも考慮しなければならないが、こんなことをしたら会社が潰れてしまうと激しく抵抗するような正義感の強い職員はいなかったのだろうか。意見を言ったら居られなくなるような職場だったのだろうか。

 私の学校経営では、積極的に意見を述べる職員の育成とその環境をつくることを重視した。積極的に意見を述べられる職場は活力に溢れ、それぞれの能力が発揮されるのである。したがって、たとえどんな意見でも意見は意見として尊重し、意見を述べたことによって不利益になるような対応は絶対にしなかった。

 どのような経過をたどって不正が行われたのか知らないが、正義の道を不正に譲った代償はあまりにも大きい。  (2016.5.24)

◇生徒指導(32)…意識の問題と嘆いているわけにもいかない

 中国で何年も暮らしている人ならともかく、観光で何日間か滞在したくらいではたくさんの車が行き交うあの広い道路の横断は難しいだろう。

 仲間達が道路を横断し、一人取り残された時は横断することができず、中国人の集団に加わり何とか横断したのである。

 横断歩道を歩いていた時に途中で信号が変わったことがあった。すると車は歩行者がいようがお構いなく動き出したのである。たまたま観光案内をしてくれていた中国人が傍にいたので、どうしたらいいか尋ねると、「動いてはダメ、じっとして」と言われたのである。前後をかなりのスピードで車が行き交う中、信号が変わるまで道路中央で待っている間はかなりの恐怖を感じた。

 夜間に無灯火バイクが目の前を通り過ぎたり、歩道を歩いていると、後ろから来たバイクに警笛をならされて端によけさせられたり、中国の交通事情はかなり無秩序のように思えた。日本の場合は中国に比べれば秩序があるが、自転車運転に関しては大人も子どもも酷いと感じることが多い。

 止まれの標識では止まって左右の確認をする。雨の日は合羽を着用して傘差し運転をしない。車道や歩道の右側通行をしない。信号無視、夜間の無灯火運転、並進や二人乗り、イヤホンで音楽を聴きながらの運転はしない。右左折などで道路を横切る時は前後方をよく確認する。ヘルメットを着用し安全運転を心がけるといった指導はどこの学校でも行われているはずだが、ルール無視も多く歩行者もドライバーも危ない目にあったことが少なくないだろう。

 危ない目に遭って学校に抗議(指導しているのか)してくる人がいるが、指導の事実を説明すると、冷静さを取り戻し電話を切るのである。

 自転車の交通違反による事故多発、厳罰を求める声に道路交通法が改正(2015年6月1日)されたが、必要な改正だった。学校は年に何回も指導していることだが、諦めずに今後も諸々工夫をしながら意識が高まるようにしていかなければならないだろう。   (2016.5.17)

◇見過ごすことはできない

 常磐道で起きたバスと乗用車の正面衝突事故(平成28年5月4日)は、乗用車に乗っていた母親と6歳の子どもが死亡する痛ましいものだった。

 事故現場は片側1車線で中央をポールのみで仕切った対面通行部分である。高速道路での対面部分は、対向車が中央を越えて来たら大事故は避けられないと誰もが緊張する場所だろう。

 台湾の高速道路では、いざとなったら戦闘機などの離発着ができるように中央分離帯を設けず、コンクリートブロックやガードレールで仕切られている部分があるが、簡単に越えられそうにないものだった。対面通行部分での大事故を防ぐにはそのくらいのことをすべきだろう。高額な料金を取りながら、ポールのみの仕切りでは安全軽視と言わざるを得ない。

 対面解消までの仮のものだから仕方がないと考えていたが、もう何年もその状態が続いている所も少なくない。危険なことは危険と声を上げ見過ごしてはならない。 (2016.5.10)

◇江田島五省

 結婚式で江田島五省を引用して祝辞を述べられた方がいた。興味深い内容だったのでその方に挨拶し話を聞かせてもらった。後日、額に納められた五省が届いた。

 〇至誠に悖(もと)るなかりしか
 (誠意に欠けたことはなかったか)

 〇言行に恥づるなかりしか
 (恥ずかしい言動はなかったか)

 〇気力に缺(か)くるなかりしか
 (気力に欠けたことはなかったか)

 〇努力に憾(うら)みなかりしか
 (努力が足りなかったことはないか)

 〇不精に亘(わた)るなかりしか
 (怠けてものぐさしたことはなかったか)

 五省は、広島県江田島にあった海軍兵学校の精神を代表するものとのことで、現在は海上自衛隊に受け継がれている。毎晩自習終了後、兵学校と変わらぬスタイルでその日一日の自分を顧み修養に励んでいるとのことである。

 アメリカのアナポリス海軍兵学校でも五省が教育に活用されているとのことだ。戦後やって来た第7艦隊の司令官(ウイリアム・マック中将)は、五省の精神に感銘を受け、やがてアナポリスの校長となり訓育の資として採用した。

 戦前を否定する風潮は今も続いているようだが、全てが悪かったわけではない。現在に生かせるものは大いに生かしたいものだ。  (2016.5.3)

◇生徒指導(31)…家庭の指導力を生かす

 大都市のことはよく分からないが、地方では登下校や部活動などの移動手段に自転車を利用することが多く、ヘルメットの着用を義務づけている。何十年の歴史があるのでヘルメットの有用性に疑問をもつ人はいない。

 車に撥ね飛ばされ、見ていた人が命はないなと感じた事故だったが、ヘルメットを着用していたためにかすり傷で済んだ例もあるが、着用していたならと感じた重大事故もある。

 夏季になると、ヘルメット着用は生徒にとって特におっくうなのかもしれない。顎紐をゆるめ、あるいは前かごにヘルメットを入れ自転車に乗る生徒を見かけることも少なくない。

 保護者から、「登下校や部活動ではヘルメットを被るよう生徒に指導するのに、なぜその他の時は指導しないのですか」と聞かれたことがあった。学校も実はそうしたいが、「登下校や部活動ですらきちんと(全員に顎紐までしっかりしめさせる)ヘルメットを被らせることができないのにその他の時までできない。教職員には精神的にも身体的にもその余力はない」ので、家庭でやっていただくしかないと答えたのである。

 学校から年々余裕がなくなり家庭の期待に応えられないことも多い。学校が多くを指導できないなら家庭の力を引き出すしかない。今までもこれからも学校はそのための工夫が必要である。 (2016.4.26)

◇恒産なくして恒心なし

 連日のように報じられる事件には辟易する。乳幼児の虐待や殺害、死体損壊遺棄、妻、親、祖父母の殺傷など、衝撃的な事件ばかりである。

 たくさんの事件の中で特に強い憤りを感じるは、抵抗すらできない乳幼児や集団でのむごい仕打ちなど、卑怯極まりない犯罪である。極刑で報いるべきだろう。

 加害者は未成年や高齢者など様々だ。職業については定職に就いている者もいるが、ほとんどは職業不詳、自称自営業、無職などと報じられ定職がない。

 孟子は、恒産(一定の資産や安定した職業)がなくても恒心(常に変わらぬ正しい心)をもっていられるのは士(学問修業をした立派な人)だけであり、一般の人々は恒産がなければ恒心をもつことができない。勝手気ままに悪い行為をしてしまうと言ったが、そういうことなのだろう。


 孟子曰く、「恒産無くして恒心有る者は、惟(た)だ士のみ能(よ)くするを為す。民の若(ごと)きは則ち恒産無ければ、因(よ)りて恒心なし。苟(いやしく)も恒心無ければ、放辟(ほうへき)邪侈(じゃし)、為さざる無きのみ。」


 日本は未だ長い不況から抜け出ていない。雇用は改善してるとは聞いても、非正規職員では安定した職業とは言えないだろう。正規雇用を増やしている企業を減税するなどして応援したいものである。かつては終身雇用社会だった日本を壊したのは大きな間違いと今更ながら感じるのである。  (2016.4.19)