中学校の卒業式では式場中央に設けた通路(花道)を通って卒業生が入退場する。盛大な拍手で迎えられ、式終了後にはこれまた盛大な拍手で見送られるのである。
卒業式の企画は教務主任が行い、職員会議を経て決定されるのだが、教務主任2年目の時だったが、感動の卒業式のためにそれまでの入退場を変更した。盛大な拍手であっても、迎える時見送る時に卒業生の方を向かず、式場正面を向いたまま拍手したのでは在校生の気持ちが伝わらないと思ったからである。立ち上がって卒業生の方を向いて拍手することにしたのである。
式は卒業生にとって感動だったのだろう。1組の卒業生が式場正面に礼をしながら「ありがとうございました」との言葉を残して退場すると、2組は、起立・礼の号令までかけて同様に退場したのだった。担任の指導ではなく卒業生の自発的行動だったのである。
この年の卒業式には教育委員会の代表として教育長が出席していたが、卒業生の行動に感銘を受けた様子で、式を絶賛したのだった。その年度から足利市の辞令交付式では転退職者を起立して拍手で見送るようになった。
しかし、起立しての拍手はわが子の入退場の様子が見えないということで、保護者には評判がよくなかった。今ではどこの学校も、着席したまま体を花道の方に向け卒業生に拍手しているのではなかろうか。 (2013.12.11)