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本来の姿を取り戻す

「みんなの心に輝く学校をめざして」取り組んだ学校経営、「生き生きとした学校生活のために」取り組んだ生徒指導で感じた課題の解消を念頭に置いて教育問題などを考えます。

◇不登校Ⅰ…不登校を理解する

 不登校は中学校で急増するが、その兆候は小学校段階で現れることが少なくない。不登校への取り組みは顕在化する前の早期の発見と対応が重要である。不登校調査が毎年行なわれるが、一向に減らないのは不登校の理解が不十分で適切な対応ができていないからである。そこで以下のような資料を作成した。

 この資料は足利西中地区の二つの小学校(三重小学校と山前小学校)の保護者に配布(平成20年9月)し、その後地域全戸に配布(平成21年3月)した。

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   不登校の理解を深めるために」

 

不登校の現状
 毎年、不登校生徒(年間30日以上の欠席)の人数や割合が、新聞やテレビなどで報道されますが、準不登校生徒(15日~29日の欠席)も相当な数になっており、無視できない状況です。
 平成18年度の不登校中学生は、全国で、103,069人、生徒全体に占める割合は、2.86%でした。栃木県は、2,024人、3.52%、足利市は、162人、3.87%でした。(小学生は、全国…0.33%、栃木県…0.40%、足利市…0.32%)


不登校は病気ではない
 登校拒否症と言われたことがあった影響か、学校に行かない(行けない)というのは普通じゃない。だから病気と考えられてしまったのか、あるいは、朝になると、頭痛や腹痛を訴えたり、微熱がでる生徒が確かにいますので、病気と考えられてしまったのかもしれません。しかし、医者には、ほとんどの人が身体的な異常はない、と言われるようです。服薬などをしても直らないのです。
 朝、頭痛や腹痛、微熱等の身体症状が出るというのは、嘘ではありません。心の問題から身体に症状が現われるのは、時に大人も経験することです。極度の緊張で、胃がキリキリと痛むなど。


◆学校を拒否しているのではない
 10年くらい前までは、登校拒否と言っていました。登校したいのにできない(「明日は学校に行くよ」と準備をし、床に入るのですが、朝になると、行けなくなってしまう、といった例はたくさんあります)、登校意欲がわかない、集団に溶け込めない、といった場合がほとんどで、拒否ではないのですから、呼称変更は適切でした。
 不登校を登校拒否と言っていたのでは、「現在の学校には多くの問題があり、そのために生徒が登校を拒否している」との認識をもつ人も出てくるでしょう。学校に改善すべきことはたくさんありますが、間違った認識からは、間違った対策しか出てこないと思います。


不登校はいじめによるものか
 「学校には、そんなにいじめがあるのかい?」、「不登校の原因はいじめなんだろ」と聞く人がいます。しばしば報道されるいじめと不登校が結びついて、不登校の原因をいじめと考えてしまったようです。
 いじめが横行する学校なら、いじめによる不登校は多くなると思いますが、いじめが減っているのに不登校は増加しています。いじめが不登校の原因ならば、いじめ解消で不登校はなくなります。しかし、いじめがなくても不登校は起きているのです。


◆どの子にも起こり得る
 文部省は、不登校に対し、「どの子にも起こり得る」との考えを示しました。不登校問題の認識が深まってきた現在では、「特異な子どもの特異な行動」と考える人はほとんどいないと思います。「どの子にも起こり得る」とは、どの子も不登校になる可能性があるから注意しなさい、という意味ではありません。「どの子にも起こり得る」との認識の下、学校・家庭・社会のそれぞれが教育を見直していくことにあります。


不登校は「学校教育の今日的課題」と言われている
 学校だけの対応で解決できる課題ではありません。「むなしい家庭、忙しい教師、冷たい社会」などと言われたりもする現在の状況を考えれば、「家庭や社会の今日的課題」とも言えるのです。
 しかし、私たちは、不登校の原因が、家庭にもある、社会にもある、と責任転嫁をするつもりはありません。不登校の子をもつ保護者は、ほとんど例外なく、悩み苦しんでいるのです。どうしたらこうした保護者の力になることができるのか、といつも考えているのです。
 学校教育の今日的な課題とは、不登校への認識を深め、悩み苦しむ保護者や生徒に、有効な支援ができる力を私たちが身につける、ことと理解しています。


不登校にもいろいろ
 一口に不登校といっても、
・学校生活に起因…いじめや嫌がらせ等、明らかにそれと理解できる学校生活上の原因から登校できない。
・遊び・非行…遊ぶためや非行グル-プに入って登校しない。
・無気力…何となく登校しない。迎えに行ったり、強く催促すると登校するが長続きしない。
・不安などの情緒的混乱…登校の意志はあるが、身体の不調を訴え登校できない、漠然とした不安を訴え登校しないなど、不安を中心とした情緒的混乱によって登校しない。家から一歩も出ない、出る時は友達に会わないような方面だったり、あるいは自分と気づかれない服装をして出るなど、人目を極端に気にし、かなり神経質になっている場合は多い。
・意図的…学校へ行く意義や価値を認めず、自分の好きな方向に進んでいる。
 その他、上記の複合されたものなど、さまざまな形の不登校があります。


不登校のきっかけ
 不登校の直接的なきっかけには、
・友人関係…いじめやけんかなど。
・教師との関係…強い叱責や注意など。
・学業不振…成績不振や授業が分からない,試験が嫌いなど。
・部活動の不適応
・転入学や進級時の不適応
・校則をめぐる問題
・家庭生活の急激な変化…父親の単身赴任や母親の就労など。
・親子関係…親の叱責や言葉、態度への反発など。
・家庭内の不和…両親の不和、祖母と母親の不和など。
・病気による長期欠席など、さまざまなものがあります。これらによって不登校が誘発されることになります。ここで留意すべきことは、きっかけを真の原因にしてしまうことです。原因は別のところにあります。 


不登校の原因
 不登校は、学校、家庭、社会環境が複雑にからみ合って起こるもので、原因はそれぞれ、したがって、対応もそれぞれ、不登校に対応する教科書はないと言われています。

<学校>
 年間200日前後登校し、980時間の授業を行います。そのために、各教科、道徳、学活、総合的な学習の時間によって編成された授業を、1日5~6時間行うことになります。また、「受験競争」が少なからず重荷になるのかもしれません。

<家庭>
 忙しすぎて子どもの話を十分に聞いてやれない状況があります。迎えてくれる家族のいない家に帰る子どもも大勢います。逆に、少子家庭のため、保護者の手が行き届きすぎるという面も出てきました。また、核家族の増加により、お年寄り(子育ての大先輩)の知恵が十分生かされないという面もあります。

※ここでお断わりしておきますが、お年寄りのいない家庭はダメと申し上げている訳ではありません。お年寄りの存在価値は、確かにあると言いたいのです。

<社会>
 外で遊ぶ子どもが少なくなっています。遊び場が少ないことや安全面の問題、あるいは、学習塾通いなどが増えて、遊び相手がいないこともあるようです。したがって、家の中で過ごすことが多くなります。また、不健全な雑誌などが簡単に手に入る状況も出ています。

 諸々のことがからみ合った環境の中で、子どもは発達課題(成長の過程には、それぞれの時期で達成しなければならない課題がある)の不履行という状態にあったのです。そのため、生きる力が培われなかったと考えています。

<生きる力>
・人間関係を築く力  ・障害を乗り越える力  ・失敗を恐れない態度  ・礼儀作法 ・善悪の判断力  ・ねばり強さ  ・その他(生きるために必要なこと)

 教科書はないというのは、解決策がないということではありません。生きる力を培うのですから、遅すぎるという心配もいりません。


不登校のきざし

 <学校では>
・ポツンとしていることが多い。
・生活に生気がなくなる。
・オドオドした様子が見られる。
・遅刻、早退、欠席が増えてくる。
・学習意欲がなくなる。
・自信がなく存在感がもてない。
・部活動を休むことが多くなる。
・消極的で自ら行動しなくなる。
・その他

    <家庭では>
・何度起こしても起きてこない。
・支度が遅くぐずぐずしている。
・朝になると体の不調を訴える。
・元気がなく表情が暗い。
・午後になると元気が出る。
・生活のリズムが乱れてくる。
・外出しなくなる。
・登校をしぶる理由が分からない。


◆責任を外に求めない
 子どもが不登校になると、誰もがその原因を突き止めようとしますが、ほとんどははっきりしません。そこで、ほんのささいな出来事をとらえて、責任の全てを外部に求め、追及するようなことをすると、子どもは益々登校しづらくなります。
 不登校を直すのは本人自身です。そのために、関係者が連携し知恵を出し合うことが大切です。外部にばかり責任を求める姿勢は、この連携を妨げます。いつまでも、不登校解消のスタートラインに立てません。


◆上手な対応には
 不登校は必ず直りますし、正常な反応と考えています。自分づくりのために、「時間をください」と言っているようなものです。専門家の中には、「不登校を祝福したい」と言っている人さえいます。子どもが、不登校を起こすことによって、子ども観や人生観、あるいは、教育観が変わり、子どもと共に周囲の大人たちの人生も豊かになる、とのことだそうです。
 短期間の劇的な改善はほとんどありません。つらいかもしれませんが、子どもを信じてじっと待たねばなりません。保護者は自らの不安や焦りを解消し、人生を楽しむ心持が必要です。保護者が元気(元気になるまでが大変)になれば、不登校が直るのはもうすぐです。 (2011.10.18)