職業に貴賤上下の別はなしとは言われるが、人を育てる仕事は特別でひときわ尊いと思っている。そう思っているのに、教師を希望する高校生や大学生に教師になることを強く薦めることができない。それがとても残念である。
38年の教職経験で感じていたことは、教職員を含め教育関係者にあまりにも多忙な教育現場を改善するという気概に欠けていたことである。「昔から教育現場は忙しかった。忙しいのは当たり前だ。ゆとりは子どものゆとりであって教師のゆとりではない」などと発言する年輩職員や管理職もいた。こんなことでは改善は無理である。忙しいという字は心(りっしんべん)を亡くすと書くが、心を亡くす状況を放置してはならない。
やればやる程おもしろくなるのが仕事なのだそうだが、納得できないこと、あまり意味のないようなものはどんなにやってもおもしろくなるはずがない。ストレスを溜め込むだけだろう。全国で毎年5千人程が精神疾患で休職している状況はあまりにも異常である。
難関の試験に合格して採用されたのに、教職を去った話を伝え聞いたり、命を絶ったという報道には暗い気持ちにさせられる。上意下達ではなく現場からの教育改革、どうしたらいい学校ができるのか、働きやすい学校になるのかといったことを優先して改革することが大事である。教師をめざす若者に胸を張って教育の魅力を語りたいものである。 (2017.3.21)