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本来の姿を取り戻す

「みんなの心に輝く学校をめざして」取り組んだ学校経営(足利市立中学校)、「生き生きとした学校生活のために」生徒指導主事として取り組んだ生徒指導で感じた課題の解消を念頭に置いて教育問題などを考えます。

校長室だより(6)

みんなの心に輝く学校をめざして(11)-平成20年9月1日

 あっという間に夏季休業も終わり、2学期が始まりました。多忙な学期になるかと思いますが、振り返れば生徒も教職員も楽しかったと思えるような学期にしたいものです。

◇終業式(7月18日<成績で人生は決まらない>)
 今日は通信票が渡されますが、通信票には喜ぶ人がいれば、がっかりする人もいるものです。喜ぶ人には喜んでほしいと思いますが、がっかりした人には変な言い方ですが、がっかりしないでほしいと思います。
 私の知り合いで、互いに同級生の二人の人がいます。一人は学校の成績が非常に優秀でしたが、もう一人は目立たない存在でした。この目立たなかった人と顔を合わせる機会がありました。近況を聞かせてもらうと、今では社長になっていました。社長には家の跡を継いだのではなく、自分で会社を立ち上げたとのことでした。そして、成績優秀だった方はその会社の社員となっていました。話を聞かせてもらいながら、人生は成績だけではないということをつくづく考えさせられました。
 だから、勉強しなくても大丈夫というのではありません。勉強は一生懸命やってほしいのですが、結果については悩まないで堂々と胸を張って生きてほしいと思っています。本日渡される通信票は、皆さんの将来や可能性まで評価しているものではありません。

※生徒は学校生活の大部分を授業で過ごしています。したがって、どうしても成績にとらわれがちです。保護者も同様かもしれません。頭が良いだの悪いだのと劣等感をもたせたくありませんし、優越感にひたることもないと思います。「駕籠(かご)に乗る人担(かつ)ぐ人、そのまた草鞋(わらじ)を作る人」との教えは、多くの皆様のお陰で生きていること、誰もがこの世の中で役に立ちそれぞれに人生があることを教えています。道理に反した生き方には恥じても、成績で恥じることはないでしょう。

◇生徒と一緒にいられる時間を
 先生方が忙しくなり、机にしがみつくような生活を強いられているように感じています。仕事が増えることはあっても減ることがありません。こんなことは間違いであると、誰もが感じているのですから、ここらで真剣に考えなくてはいけないでしょう。
 小学校では、「先生、遊ぼう」と児童が声をかけなくなっているそうです。先生が忙しいのを知っているからなのだそうです。このような状況を「教育不在の教育」と言う人もいます。家庭も似たような状況のようです。仕事仕事で、家族が一緒にいる時間が極端に少なくなっていると思います。難しいことではありますが、学校も家庭も相当な努力が必要です。
 学校では、教師と生徒が一緒にいられる時間、家庭では家族が一緒にいられる時間が多ければ多い程望ましいということをしっかりと受け止めなければなりません。

◇子どもを通わせたくなる学校
  母校に子どもを通わせたいと同級の卒業生が口々に話しているという話を聞いたことがあります。厳しい学校ではあったが、そのお陰で今の自分があるとの強い思いを皆がもっていたとのことです。
 卒業生だけでなく、教職員が子どもを通わせたいと言うような学校なら、最高の学校です。教職員が子どもを通わせたくないと思うような学校なんて学校ではありません。


みんなの心に輝く学校をめざして(12)-平成20年9月15日

◇始業式(9月1日<規則正しい生活、苦しい時こそ笑顔>)
  夜更かしをしたり、食べたり食べなかったりと生活が乱れると、意欲や気力が出ません。したがって、根気も出ません。皆さんもそんな経験をしたのではないかと思います。
 「規則正しい生活をするとねばりが出る」と聞いたことがありますが、意欲や気力に欠け物事を続けられない人は、ほとんど例外なく不規則な生活をしています。つくづく名言であると思います。夏休みで生活が乱れてしまった人もいるでしょう。規則正しい生活習慣を築きながら、成果を上げる学期にしてほしいと思います。
 今学期はたくさんの行事があります。楽しいことばかりではありません。苦しいこともあるかと思います。そんな時にどうするかを話します。
  以前私はバスケット部の監督をしたことがあります。バスケットの試合中、選手達が苦しそうな顔をし出すと、決まってタイムをかけ話しました。「苦しい時に苦しい顔をしてはならない。苦しい時に苦しい顔は誰もがすること。苦しい時こそ笑顔だ」と。
 タイム後は監督の期待通り、疲れているにもかかわらず元気な試合をしてくれました。皆さんにも、「苦しい時こそ笑顔」で頑張ってほしいと思います。

※精神面の強い人、弱い人に根本的な違いはないと思います。資質的に違いはあるにしても、そんなことは五十歩百歩、大したことではありません。大切なのは心のもち方であると思います。高校時代、「お前はなんてタフなやつなんだ」と仲間から声をかけられ、「どうしてそう思うのか」と聞けば、「あの時の練習は苦しくて立っているのもやっとだった。なのに元気だったじゃないか」と。
 私もその練習は苦しくて立っているのもやっとでしたが、周りを見渡せばみんな苦しそうだった。苦しいのは自分だけではないと思うと少しだけ元気が出、もうちょっと頑張ろうとの気持ちになっただけでした。たったそれだけの違いだったのです。

◇明日を信じて
 「朱に交われば紅くなる」という思いがあるのか、問題行動を繰り返す生徒と、我が子をつき合わせたくないと考える保護者は少なくないでしょう。中にはつき合うなと注意する保護者もいることと思います。教師も問題行動の波及をくい止めるために、時にはそのように考えることもあるでしょう。いろんな場合があるので、一概に望ましいとか望ましくないと言うことはできませんが、教師には言ってほしくないことです。
 人間は、自己の人生の意義(存在価値、使命、真の喜び、等)を理解して生きることが大切と思います。問題行動をくり返す生徒は、人生の意義を分かっていないのです。だから今を大切にしないのです。手にした食券で食事ができると知ったら食券を捨てたりしません。知らなければ、単なる紙切れで捨ててしまうかもしれません。問題行動のくり返しは食券を捨てるような行為であると思います。この世に生まれた甲斐もなくなるでしょう。
 教師が困っている生徒は、本当に困っているのは生徒自身であるとお聞きしました。教師の手を他の生徒以上に必要としています。教師にもつき合うなと言われ、見捨てられたら本来の姿を取り戻すことも容易ではないと思います。腹の立つ時もあるでしょうが、温かいまなざしは必要でしょう。  (2024.12.10)