リオのオリンピックで、柔道73㎏級の金メダルに輝いた大野将平選手は、アゼルバイジャンのオルジョイ選手に勝った瞬間、にこりともせず万歳もガッツポーズもしなかった。
前回のロンドン大会では男子柔道に金メダルがなかったので、2大会ぶりの金メダルであり、喜びを爆発させるような派手な振る舞いがあっても不思議ではなかった。しかし、大野選手は気持ちを乱すことなく、しっかりと礼をして畳を降りたのである。そして、やっと笑顔を見せたのだった。
試合後にそのことを尋ねられ、相手がいますからと敗者を気遣ったのである。そして、礼に始まり礼に終わる武道の精神、柔道の素晴らしさ、強さ、美しさを伝えられたのではないかと柔道家としてその魅力を語ったのである。
柔道の国際大会で相手をぶん投げ、体にのった状態でガッツポーズをした選手がいたが、武道の精神はどうしたのかと感じたことがある。剣道では、有効打突が宣告された後でも宣告が取り消される不適切な行為なのである。
強いだけではなく敗者に敬意を払うなど、金メダルに相応しい人間性を感じたからこそ大野選手を多くの日本人が賞賛したのだろう。清々しい気持ちにさせてくれたのである。 (2016.9.13)