彫刻家の平櫛田中(1872~1979)は、100歳を超えても彫刻用の木材を30年分も所有していたとのことである。買い込んだ木材を彫刻するまで生きていられないと考えたら、どこかで買うのを止めたであろう。
誰の箴言(しんげん)か分からないが、「人は永遠に生きるかのように生きなければならない」と聞いたことがある。天寿を迎える年齢になっても木材を買い込み、そして、「いまやらねば いつできる わしがやらねば たれがやる」を座右の銘とした生き方には魅力を感じる。
校長になり、これから実行しようと考えていることを話すと、ある校長から、「あと何年あるんだい」と言われたことがあった。退職まで何年もないのに、そんなことできないだろうしその必要もないとの意味に取れた。しかし、その時話したことはほとんどできたのである。
栃木県の教職員は、原則として新規採用者で5年、その他は10年で異動することになっている。「異動まで何年もないので、新たな取り組みをしないようにしている」と話した人がいたが、異動後残った人に迷惑をかけたくないとの気持ちは分かるが、やるべきことまでやらずに異動してしまうことがあってはならない。
校長には残り何年もない年齢でしかなれないが、「あと何年しかない」ではなくて、「まだ何年もある」と考えることが大事である。退職しても学校の未来に責任があると考えやるべきことをやったなら、学校は活力に溢れ更に伸びていくことだろう。意気消沈するような学校には決してならない。 (2015.11.26)