「多額の負債を抱えながらも…」、「乳飲み子を抱え…」、「寝たきりの家族や病人を抱え…」、「不況の中、たくさんの従業員を抱えて必死に…」など、不利な状況にもめげず努力する人を賞賛するような場合ならともかく、「抱える」という言葉は慎重に使うべきだろう。
ある人権教育研修会のことだったが、「我が校は、被差別部落を抱えている…云々」と発言した校長がいた。長いこと人権教育に携わり、本人も人権教育には造詣が深いと自負する人の発言だった。
「いつから学校は被差別部落を抱えるようになったのか。被差別部落は抱えられる存在なのか」と参加者に追及され、解放同盟の市協議会議長も「我々は学校に抱えられる存在では決してない。我々は学校を支えている」と堪らず発言したのである。
抱えているとの発言には、お荷物、厄介なこと、迷惑といった意味を感じてしまうこともある。我が校は問題を抱えているとは言っても、問題生徒を抱えているなどと言ってはならない。 (2015.11.6)