道徳主任から、現職教育として学年1名ずつの3名に授業を提供してもらい、学年ごとに授業研究を行いたいとの提案があった。いつもならどうぞ宜しくお願いしますと言うところだが、その時だけは隣の小学校で道徳の研究発表会があるので、全員で参加し学んではどうかと逆に提案したのだった。教職員に異論はなかった。
毎年ではないが、少なくとも数年に一度は授業研究会を行うなど、学校は道徳教育の研究を続けている。昭和33年から始めた道徳教育はもう50年以上にもなるのに、連日のように凶悪な事件が発生するなど、世情を憂える声は高まるばかりで静まることがない。今までの道徳教育は間違っていたのではないか、との視点で見直す必要性を感じていた。
研究発表会では、元文科省の道徳担当の教科調査官で道徳教育に多大な影響を及ぼしてきた大学教授の講演があったが、講演を聴いていた教職員はあまりのばかばかしさに呆れたのである。
「どうして校長は講演を聞き続けたのか、校長が会場を出ないので自分達も出られなかった」と言うのだった。本もたくさん書き、道徳教育の大家と言われている教授の講演には、学生は騙せても我々は騙せないとの思いをもったようである。
教職に就いた頃、「こんな道徳やったって…」と、成果が期待できないと語った先輩教師がいたが、その先輩の思いは今も解決されていないと感じるのである。 (2014.4.21)