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本来の姿を取り戻す

「みんなの心に輝く学校をめざして」取り組んだ学校経営、「生き生きとした学校生活のために」取り組んだ生徒指導で感じた課題の解消を念頭に置いて教育問題などを考えます。

◇勝つのは今でなくても

 大学生の試合でも、攻めも合気も何もなく、始めと同時に打ち込んでいくような試合が少なくない。ただの打ち合いといった感じで、こういう試合では剣道の素晴らしさ、面白さは伝わらないだろう。

 剣道の指導では、自分もそうだったが、勝たせたい、強くしたいという思いで、ついつい多くのことを教え、厳しい注文をしてしまうことも多い。剣道が目指していることは、剣道の理念「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である。」と剣道修錬の心構え「剣道を正しく真剣に学び、心身を錬磨して旺盛なる気力を養い、……以って国家社会を愛して広く人類の平和繁栄に寄与せんとするものである。」に述べられているが、そのことよりも試合で結果を残すことばかり考えてしまうからかもしれない。

 孟子の譬え話に、自分の畑の苗が伸びていないのを心配した農夫が、早く伸ばそうと一日中苗を引っ張り、疲れ果てて帰宅して、「今日は疲れたよ。私は苗の成長を助けてやったからね。」と話したので、家族がびっくりして畑に飛んでいくと、苗は皆枯れていたという話がある。この農夫のような指導者にならないよう注意が必要である。

 剣道は難しく、教えられたようにできないし、教えた人も、教えたようにできないもので、稽古をすればするほどその難しさが分かる。達人と言われた昔の大先生は、多くを語らなかったということだが、難しくて語れなかったのかもしれない。

 フランスには剣道愛好者が多いということである。フェンシングがオリンピック種目になったことで、騎士道精神をフェンシングに求めることができなくなったというのである。剣道にはその精神があるというのが理由なのだそうだが、ただの打ち合いのような試合をやっていたのでは剣道精神を培えないだろう。

 試合のことばかりが念頭にある指導では、結果を残せない選手が止めていくようなことも起きる。剣道人口が増えないのは剣道の魅力を伝えきれていないこと、そして、このような指導にあるのかもしれない。試合は今勝たなくても後で勝てるようになればいいと考えていくことも大事だろう。 (2015.1.29)