校長職を終着駅と考える人が世の中にはいるが、教職員の中に、あるいは校長自身にそんな認識があってはならない。校長にしかできないことがたくさんある。校長職は終わりではなく始まりだ。現場の思いを積極的に発言するなどして教育改革を推進し、国民の負託に応えるためには相当な覚悟も必要である。
命も要(い)らぬ、名も要らぬ、金も地位も何も要らぬという人間ほど始末におえぬものはない、と西郷隆盛に言わしめた山岡鉄舟の交渉の相手が、西郷という稀代の英雄だったからこそ江戸無血開城ができたのだと思う。決死の覚悟で駿河に向い、誠心誠意、捨て身の鉄舟の姿に西郷の心が響いたのだろう。鉄舟の気概、西郷の度量は大いに見習いたいことだ。
残り何年もない歳でしか校長にはなれないので、時間切れ手遅れにならないかという思いもあるだろうが、考えていることの多くは実行できる。在職中、今までの教職経験、人生経験はこの時のためにあったと思えるほどのやり甲斐を感じた。先生方には、管理職になる気はないなどと言わないで目指してほしいと思う。 (2011.11.4)