現場に次々届く教育改革の報には、驚かされることが多かった。教育論議の行方が頻繁に報道され出すと、間もなく新たな教育改革の要旨が示されるといった具合だった。そして、指導要領に示された実践はうまくいかないことが多く、改革にかかわった人たちの中に現場経験のある人はどのくらいいたのだろうか、実践によって組み立てた理論で論議が展開されたのだろうか、と考えてしまうことが少なくなかった。
足利市の教育長を務めた中村章教育長(故人)は、講話の中で「理論なき実践は盲目であり、実践なき理論は空虚である。」と話された。教育は国家百年の大計であり、教育論議は大いにやってもらいたいものだが、理論先行の実践のない人たちの改革であってはならない。
教育を改革し本物の教育を行わなければこの国が滅びると考えている人は少なくないだろう。過去の幾多の改革も目立った成果が得られなかったのは、現場の視点を欠いていたからである。教育現場の声を尊重した改革でなければ改革にならない。 (2011.7.6)